三軸試験中の局所ひずみを計測するためにメンブレンに点を打ちたいと思うことは,誰しもが一度は通る道だと思います.

今回は,世界的にも珍しい?回るメンブレンプロッターを作成したので報告します.

世の中にはペンプロッターをDIYする人は沢山いるようで,たくさんのネット記事が見つかります.これらは一般的に,平面の上に紙を置いて,XY軸でペンを持った腕を水平方向に移動させ,Z軸でペンを上下動させ,点を打ちます.

私も,これに近い方式で,三軸CNCを改造してペンプロッターならぬメンブレンプロッターを作ったことがありました.

↑ 2年前に作った三軸CNC改造メンブレンプロッター

しかし,研究の都合で,どうしても円筒状のダミー供試体にメンブレンを取り付けた状態で,メンブレンに点を打ちたいということになりました.

そこで,X軸はダミー供試体の回転とし,Y軸でペンを水平移動させ,Z軸でペンを上下動させて点を打つメンブレンプロッターを新たに作ることにしました.名付けて(メンブレンが)回るメンブレンプロッターです.

まずは,部材の選定ですが,躯体には組み立てが容易なアルミフレームを採用しました.XY軸はステッピングモーターで動かし,Z軸はサーボモーターを使うことにしました.アルミフレームとステッピングモーターはかつて3Dプリンターだった部品たちが研究室に転がっていたのでそれを使うことにしました.その他のパーツは全て自分で図面を引いて3Dプリントしました.(写真がない)

↑ フレームとモーターたち.かつてはTRONXYという3Dプリンターだったようです.

制御のためのハードウェアとしては,Arduino UnoとCNCシールドを使い,ステッピングモーターのドライバーはTMC2225を使いました.

ステッピングモーターのドライバーはA4988が一般的かと思いますが,TMC2225はA4988と互換性があり,かつステッピングモーターをより静かに動かせるとのことですTMC2225を使うことにしたのは,研究室のドライバーのストックのうち,こいつだけヒートシンクがついていたからです.

サーボモーターはMiusei MS18を使いました.PWM制御で180度の範囲を回転するサーボモータです.ポピュラーなSG90と似てますが,こちらの方が安いです.選定理由は研究室に在庫があったからです.

↑ CNCシールドv3 (X軸とY軸についているのがTMC2225のモジュール.Z軸とAは使わないので,後で外しました)

制御プログラムとしては,オープンソースのCNCソフトウェアであるGrblを使いました.様々なバージョンがありますが,サーボモータの制御ができるhttps://github.com/robottini/grbl-servoにしました.また,CNCコントローラとしてはCNCjs(https://github.com/cncjs/cncjs/releases/tag/v1.10.5)を使いました.めちゃ使いやすいです.gcodeはpythonで適当なプログラムを書いて生成しました.サーボの制御(ペンの上下動)にはM03 Sxxxを使いますが,直後に適当な待機時間を入れてやる必要があります(G4 P0.2とか).

完成したのがこちらです.

↑ メンブレンに点を打っている様子

ペンの押し下げ圧を良い塩梅にするのに苦労しましたが,最終的にラックアンドピニオン方式になりました.

ポイントは,ラックになっている(サーボに取り付けられた歯車の回転に合わせて上下動する)枠のさらに内側に,ペンを固定したパーツがあり,そのペン固定パーツはバネで押し下げられているところです.こうすることで,サーボを多少アバウトに制御しても,程よい押し下げ圧で点を打つことができます.ちなみに,バネが2本のシャフトのうち片方にしか入っていないのは,ちょうどいいバネが1個しかなかったからです….

TMC2225のおかげでステッピングモータはとても静かです.Z軸サーボモーターの方がうるさいので,あまり意味はありませんが.

今回,十個を超えるパーツを組み合わせる必要がありました.私はこれまであまり複雑なものを作ったことが無かったので,良いCADの経験になりました.

3Dプリントは,たくさんトライ&エラーができるのがいいですね.

↑ ボツになったパーツたち.たくさんの失敗を経験することで人は成長する.

このままだと,サーボモータがうるさくて隣人に苦情を入れられそうだったので,適当なケースの中に入れて運用することにしました.まだうるさい気がしますが,また怒られたらどこか別の場所に移設しようと思います.

おしまい.

↑ 横幅が足りず斜めになってしまったが,とりあえず入ったのでヨシ!

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