M2の橋本です。
夏休みといえば、自由研究ですね。今年の夏は、マイコンの勉強を兼ねて光るテトラポッドを作ってみました。
1. はじめに
テトラポッドは代表的な消波ブロックの一つで、(株)不動テトラの登録商標です。
研究室の同期が熱狂的なテトラポッド好きで、研究室にはいただいたテトラポッドのグッズがたくさんあります。
昨年夏に、3Dプリンターの使い方を勉強するために私が3Dプリンターでテトラポッドを印刷してプレゼントしたところ、好評を博した(?)こともあり、今年も何か作ってみようと考えていました。
そんな折、透明な3Dプリント用のフィラメントの存在を知り、透明フィラメントを使ってテトラポッドを印刷して、中にライトを仕込んで光らせたら綺麗だろうと考えました。
また、研究室ではしばしばマイコンを使って試験装置を制御したり計測データを取得したりしているので、その勉強もできればと思い、光るテトラポッドを作ることにしました。
作り始めると色々とこだわりたくなってあれこれ試行錯誤することになり、折角なので記録を残すことにしました。
2. 光るテトラポッド作成の流れ
以下の流れで光るテトラポッドを作成しました。
・透明フィラメントでテトラポッドを印刷する
・マイコンでLEDテープを制御し、テトラポッドが光るようにする
・無線で色や明るさを変更できるようにする
3. 透明・中空テトラポッドの印刷
まず、3D CADでテトラポッド(っぽい)図面を作りました。
脚を1本書いてから、残りの3本は複製&回転させると楽です。今回は、あとでLEDライトを入れるため、中央部の底をくりぬいたデザインにしました。
小さすぎると中にライトを仕込むのが大変で、大きすぎると今度は印刷が大変になってくるので、今回は高さが9cmくらいになるようにしました。
次に、UltiMaker Curaでスライスします。
ここで注意すべきはインフィル(構造物内側の形状)です。
通常、インフィルはGridなどが使われますが(左図のオレンジ)、この場合、光源をテトラポッド中心に設置したとしても、インフィルに邪魔されて光が脚の先端まで届きません。これではテトラポッドの造形美が伝わりません。
そこで、Lightningというインフィル形状を選択しました(右図オレンジ)。Lightningは「中を満たす」というよりも、傾斜がきつい部分を最小限のフィラメントで「下から支える」形状をしています。
そのため、強度は下がりますが、薄くて印刷時間が早く、なにより今回は脚の末端まで光らせることができるというメリットがあります。
最後に、印刷に際しては、PLA樹脂の透明フィラメントを用いました。といっても実際は半透明くらいで、中が透けて見えるということはありません。ただし光は割と通します。
4. マイコン+LEDライトで光らせる
今回は、Seeed Studio XIAO ESP32C3というマイコンボードを使用してLEDライトを制御することにしました。このボードを選んだ理由は、①小さい(PINは1個で足りる)、②MicroPythonが使える、③Wi-Fi機能搭載、です。1000円くらいでした。
LEDライトはRGB制御(R,G,Bそれぞれで256段階の指定)が可能なテープライトを使用し、NeoPixelモジュールで制御しました。左の図のように初めてLEDライトが光ったときはちょっと感動しました。
最初は左の図のようなテープ状のライトをそのままテトラポッド内に入れてみたのですが、ライトが当たる向きが偏ってしまい、どうしても均等に光りません…。これではテトラポッドの造形美が(以下略)。
そこで、右の図のように、3Dプリントしたパーツに4枚のLEDライトを貼り付ける形に改良しました。4本の脚それぞれに向かってライトを光らせることで、脚の先までしっかりと光るようになりました。
5. 無線制御
これで一応動くようになりましたが、折角RGB制御で1680万色もの色を表現できるので、コードをいじらなくても色を変えられるようにしたいところです。
そこで、マイコンをWebサーバー(Wi-Fiのアクセスポイント)として、スマートフォンなどでWi-Fi接続すると、ブラウザから色や明るさを無線で変えられるようにしました。
Microdotのmicrodot_asyncio
モジュールを用いてWeb サーバーをコルーチンとして起動できるようにしました。また、uasyncioモジュールで非同期処理を行って一定間隔でWebサーバーへのリクエストを見に行き、リクエストがあれば色や明るさを更新できるようにしました。
図はスマホからアクセスしたときの様子です。
6. おわりに
以上で、光るテトラポッドが完成しました!
インフィルの構造とLEDライトの配置の工夫により、テトラポッド全体がしっかりと光っていてとてもきれいです。
テトラポッド最高!
7. 謝辞
光るテトラポッドを作成するにあたり、技術職員の久野さんにはほぼ全工程にわたって数多くのご助言をいただきました。
また、手先が器用なふすま職人のMくんには、5.の細かいはんだ付けをやってもらいました。
ここに記して深甚な感謝の意を示します。