3月13-14日に研究室でスキー旅行に行きました。

We went on a ski trip on 13-14 March.

「悪いのは全部マチアス・ツダルスキーだ!!!」

リフトに乗りながらこう考えた。

知に働けば角がたつ
情に棹させば流される
とにかく人の世は生きにくい

まてまて、『草枕』の冒頭を思い出してる場合じゃない。草枕書かれたとき日本ではスキーが本格的に行われていない。スキーとは全く関係ないがリズムがいいのでピンチになるとよく思い出してしまう。

そんなことより目下の課題は迫りつつある斜面との戦いに備えることである。今回桑野研究室ではスキー旅行として福島県のスキー場に来ていた。僕がスキーをするのは3年ぶり2回目、始めたばかりなので伸び代は無限大だ。無限遠まで伸びた代は、自分が今底辺にいることを意味する。(ちなみに「伸び代」という言葉は元々野球業界から一般に普及した言葉のようだ。スキー用語ではない。勘違いされている方がいたらいけないので補足しておく)やばい。怖い。転ぶ。そもそも僕は高所恐怖症なんだ。リフトの降り口が近づいている。リフトに揺られてる時間も下が見えて怖いので、降りられて一安心だが、リフトの降り口に待っているのは、本来の物理的な意味でも、将来自分が滑り終えるという比喩的な意味でも、先の見えない斜面なのである。

そもそもスキーを始めた人は、誰なんだろうか。現代こそ、転倒の衝撃から守ってくれる立派な防具や初心者のための技術的指導をする熟練の講師たちがいるため安全にスポーツ・レジャーとして楽しむことができるが、古代、スキーが誕生した瞬間に、安全な用具や先人などいない。スキー板さえないからその辺に落ちてる木の棒なんかに乗って斜面を滑ろうとした人がいるということだ。
「なんか空から降ってきた白いやつが積もってるんだけど笑」
「ワンチャンあの木に乗っかれば下まで滑れるんじゃね笑」
「いや、お前さすがにそれは無理やろ・・・いやいけた!!」
こんな会話があったかどうか真偽は定かではない。定かではないが、こんなノリで僕が斜面との戦いを迫られているのだとしたらこの人たちを許すわけにはいかない。

公益財団法人全日本スキー連盟の日本スキー教程によれば、スキーの発祥は紀元前2500年ころのようだ。目的は交通手段や狩猟で、シベリア、中国、朝鮮半島、樺太など広範囲で広がっており、その様子が残された壁画は冬季オリンピックで使われるピクトグラムのモデルとなったこともある。スキーを国技とするノルウェーがあるスカンディナビア地方ではスキーの神というのが存在するそうだ。
交通手段や狩猟として使っていたのなら、それを責めるのは先人に対するリスペクトが足りない。雪道で素早く移動するのは今回のスキー旅行で行われた雪上運動会で理解した。


かといってスキーの神のせいにすると、神様が持ってる弓に射抜かれそうだしやめておこう。そうだ、現代のスキーはスポーツおよびレジャーとして行われている。生きるための手段だったものを変化させたものがいるとしたらそいつの責任は大きい。

1870年代ノルウェー王室がスキー競技の勝者に賞を与えるようになり、スキーは一般的に広まったという。1879年ハスビーというところでジャンプ大会が開催され、スポーツとしてのスキーの歴史は始まった。この大会にテレマーク地方から参加した少年たちの技法が注目されたことが、現在でもクロスカントリー、スキージャンプなどで残るテレマークスキーの始まりである。一般的にスキーを広げたという意味ではノルウェー王室が大きな影響を与えたのは間違いないが、彼らの影響で広まることになったのは、靴のかかとがスキーに接着されていないノルディックスキーであり、僕がしたアルペンスキーではないから、ノルウェー王室を責めるのは違いそうだ。(決して王室が怖いから贔屓しているのではないぞ。)

1888年になると科学者フリチョフ・ナンセンがスキーを用いてグリーンランド横断を達成した。3年後執筆された『グリーンランド横断記』に強い影響を受け、やや幅広目なスキー板や急なアルプスの斜面を転ばずに軽快に滑り降りる新滑走方法をマチアス・ツダルスキーが考案した。これがアルペンスキーの始まりである。この時よりそれまで主流だったテレマーク派と新勢力アルペン派が対立していくことになる。決着は20世紀に入って両者の長所を取り入れたゲオルグ・ビリゲリーが登場してからなのだが、そんなことはどうでもいい。
いたぞ!犯人!!
唐突に現れてグリーンランドを横断するマッドサイエンティスト、フリチョフ・ナンセンもなかなかだが、彼の本に影響されて新技法アルペンスキーを開発してしまう、マチアス・ツダルスキーという人物が、僕が斜面との戦いを強いられる原因のようだ。名前にスキーって入ってるしそのために生まれてきたと言っても過言ではないだろう。界隈では「アルペンスキーの父」と呼ばれているそうな。

その後のスキーの歴史は稀代の天才児がオーストリアで誕生したり、さまざまな技術が考案されて、大きな論争となったりと、いろんな人たちの努力によって発展してきたようだ。誰か1人の突飛な発想ではないので誰か1人を責めたりするということはできないかもしれない。

ちなみに、日本では1911年1月12日、上越市において初めて本格的なスキー講習が行われたことから、1月12日がスキーの人されている。来年は金曜日ということなので学校や仕事終わりにスキー旅行に行くことができるかもしれない。

斜面が怖いとは言っても滑り出してしまえば後戻りもできないので、何度かの転倒と悲鳴をあ伴った滑走を繰り返して、ちょっとした高揚感を伴いながら下まで行くことができる。そして気づいたら、リフトの入場口に並んでいるのだ。早くリフトに乗りたくて逸る気持ちを抑えながら。

スキーの普及のきっかけがマチアス・ツダルスキーだけにリフトのまちがだるすぎーってか。はーはっは、、、

つまらない親父ギャグで滑っていることも、スキーで散々転んだことも全部自分のせいなので人のせいにするのはやめよう。それが僕がこのスキー旅行で得た教訓である。

(この記事は一つの文献を元に書かれたものであり、内容に関して厳密な考証を行っていません。)

「Ski Tour !」への2件のフィードバック

  1. “Mathias Zdarsky, he is responsible for this mess.”, I whispered on the ski lift.

    We, the Kuwano lab, were in Fukushima for skiing. It’s my second time skiing, and it’s been 3 years since the last time. I didn’t know how well I would ski, meaning at the same time that I’m still a beginner.
    “The only thing that matters now is this white slope.” Arriving at the top of the lift, I was almost drowned in the fear of heights. Then, I remembered something important: “I have acrophobia.”

    Who the hell came up with the idea of skiing? Before the invention of equipment like skis and snowboards, what inspired people to ski on the snow?

    According to the Ski Association of Japan, the origin of the act of skiing goes back to around the 25th century BC, with the purpose of trips and hunting. “Then, it’s not worth blaming them.” I got it during the Snow Athletics Championships.

    However, if somebody distorted this activity for living into an activity of leisure or sport, why not accuse him of this crazy idea?

    It is said that the ski got its popularity when the Royal Norwegian Family started awarding the winner of ski competitions in the 1870s. But let’s not blame them for it, because they promoted the Nordic ski, not the Alpine one, with which I was struggling then.

    In 1888, a scientist named Fridtjof Nansen crossed Greenland with skis, and Mathias Zdarsky improved his equipment into modern forms. “Finally, I got the guilty.” In fact, Zdarsky is often described as the “father of alpine skiing”, and even more, his name sounds like “father-ski”, doesn’t it?

    However, we may have to know that he’s not the only guy having developed the ski in its history. In conclusion, I should have to reconsider the idea of accusing a specific person.

    Once we start skiing down, there’s no way to go back. After a few, or rather, a lot of screams and tumblings, I reached the end of the lane, and eventually, I found myself in the queue of the lift to go up again. My mind was no longer afraid of heights.

    I fall, I slip, and I’m responsible for them. So, “let’s stop accusing somebody else of my own incapacities.” This is the main lesson of this ski trip for me.

    (Note: Although based on a reference, no rigorous research is done for this article.)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です