連絡会中にご質問を頂き時間内に回答が出来なかった方、またアンケートにご質問をお書き頂いた方、大変お待たせいたしました。
頂きました質問に対する回答を、当日の発表者順に並べましたので、ご質問頂きました方は下記よりご確認いただければと思います。

東京大学生産技術研究所 水谷司

水谷先生への質問ですが、小型化に対する質問でポータブルまでと回答されてましたが,携帯アプリとの連携とかまで発展し、日常管理というかだれでも感知が可能なツールスへの発展はお考えではないでしょうか。

おっしゃる通りポータブルの小型LiDARが安価に入手できるようになっており,すでに私の方では計測後に端末上で処理するシステムの開発を行っておりまもなくプロトタイプが完成する見込みです.したがって,誰でも日常管理できるツールへの発展がまさにそこまで来ていると思っています.

レーザーや地中レーダーによる計測範囲は車上からどのくらいでしょうか?

レーザーの場合は数十mなど離れた箇所を計測しようと思えばできますが,回転しながら計測しているために,遠方になると点群密度が粗くなるため,我々の分析で必要な密度にしようとすると車から5mくらいの範囲までの計測を前提としています.レーダーについては,地中方向へ電磁波を照射していますが,一般的に使用されている帯域のレーダーでは1~1.5m程度の深度までが有効範囲です.それより深くなるとノイズが大きくなり計測が困難です.

床版内部の滞水損傷の抽出について、損傷部が滞水していない場合は検知不可なのでしょうか。またどの位の滞水程度で検知可となる等の目安はあるのでしょうか。

一般的に使われている地中レーダーの帯域では,乾燥している1mm程度のクラックの検出は理論上極めて困難です.水が入っている場合は,1mm未満の隙間であっても理論上検知できるレベルの反射があります.ただし,土砂化や5ー10mm以上のスリット上の空間は乾燥していても検出可能です.コンクリート内部の亀裂の場合,水が入っていない場合には進展速度が入っている場合に比べて2桁遅いことから水が入っている亀裂がより重要で,この観点からでは水が入っている亀裂は検出しやすいというのは工学的に幸運な物理現象であるといえると思います.

レーリー波による探査はどの程度効果がありますか。

今回の計測は電磁波を使っているため,弾性波はターゲットとはしていません.ただし,別の研究で弾性波観測も行っておりますが,一般的な地中レーダーが対象とする地表面から1ー1.5mの範囲においては弾性波よりレーダーの方が検出結果が良好という結果が出ております.ただし,今後の研究次第で,弾性波も解像度を上げられる可能性はありますが,今のところはこのような見解が一般的だと思います.

デモで見せていただいた送受信機(レーダアンテナ)ですが、どの位深度まで確認できるのでしょうか。 発信の周波数は固定なのでしょうか。

一般的に使用されている帯域のレーダーでは1~1.5m程度の深度までが有効範囲です.それより深くなるとノイズが大きくなり計測が困難です.私の研究室で作っているレーダーの発信機は周波数は可変です.ただし,発信周波数を変えるとそれに対応するアンテナを変える必要がありますので,計測しながら周波数の帯域を変えて,たとえばターゲットとする深度を変えるということは簡単ではないかと思います.

トンネルの剥離などを調べることのできる音波での探査は大変惹かれるものがございました。アスファルトやコンクリートの路面下を調べるにあたり、具体的にどのような条件下であればレーダー車やハンディ型よりも有効であるといえるのか、またデータ取得の際に水や不均一の礫があった場合のノイズ除去の考えがあれば教えていただきたく思います。

ご興味をお持ちくださりありがとうございます.細かい点ですが,トンネルの剥離も路面下の探査もいずれも「電磁波」を使っております.剥離はレーザーというピンポイントに電波を照射する計測機を使っております.アスファルトやコンクリートの下をより明確に探査するためには,アスファルト表面からの反射を抑えるために例えば水が滞水していないこと,路面した内部についても減衰を小さくするために,損傷部以外は含水度合いが小さいことなどが望ましいといえます.つまり降雨の直後のような水びたしではない条件がよいといえると思います.この条件はハンディ型であっても大型のレーダーであってもいずれも同じです.不均一の反応を取り除きたいということであれば,反応にもよるのですが,一般的にはディジタル信号処理でフィルタリングする方法が有効であろうかと考えられます.

土研 寒地土木研究所 林宏親

三笠の道路陥没について、お伺いします。 ①古い排水管の吞口側に、降雨後に滞水が出来た場合、排水を通じて、道路下の破損した箇  所には、どのような現象が起こったと想定されますでしょうか

直接確認することが出来ない問題ですので想像の域を出ませんが、滞水にした沢水は盛土内に浸潤し空洞内を飽和させたのではないかと考えられます。

北海道の陥没の件ですが、今回は横断管の破損による吸出しということでしたが、周辺で石炭採掘を行っていたということで、採掘跡の陥没事例というのはないのでしょうか。

当該箇所では、事後に行ったボーリング調査により、採掘跡の陥没ではないことが確認されています。当該箇所以外の事例は、申し訳ありませんが良くわかりません。

三笠市の破断した管路の素因として、高盛土による管路の沈下や、地震時の変形も可能性は検討されたのか?

事後に行ったボーリング調査により、横断管下の基礎地盤は強硬なことが確認されていますので、横断管の沈下はほとんどなかったものと思います。地震時の変形は検討されていません。

東京大学生産技術研究所 桑野玲子

充填による補修方法について使用材料やコストを共有いただけたらと思います。

今回実施した共同研究では、住友大阪セメント株式会社が空洞充填用補修材を開発しました。その仕様や開発経緯は、国総研受託研究報告書をご参照下さい。

GPRでは、深さはよいですが、拡がりを推定することはやや難しいですが、陥没予知に利用可能でしょうか?

GPRは、浅部空洞であれば、深さおよび広がりを一定の精度で把握できますので、危険度判定に有効だと思います。

夏場や地震発生後に空洞が発生しやすい(規模が大きくなりやすい)などあるとのことですが、レーダー探査による適切な調査時期やタイミングについて知見はございますでしょうか

空洞生成および成長は、雨と地震の後に促進することがわかっていますので、もしタイミングを見計らうことができるのであれば、多雨の時期の後、および地震後がよいと思います。

埋設管の調査にて浸入水が確認される箇所は、既設管路の裏側に空洞が形成されている可能性が高く、将来的に陥没の危険性があるということでしょうか?

侵入水が確認される箇所は、必ずというわけではないですが、裏側に空洞がある可能性があると考えます。

陥没危険度の判定グラフについて、地方道では舗装種別や厚さ(舗装耐力)が異なるので、勾配がきつくなるのではと思いますが認識は合っていますか?また、国道以外の舗装厚さ等別のグラフはありますでしょうか

舗装厚が大きいと、路盤が侵食されてアスコン直下に空洞があるような状態になったとしてもある程度耐えうるかもしれませんが、盛夏の舗装がやわらかい時期になると、陥没危険度が高まると考えています。つまり、舗装厚は(長期的な)陥没危険度評価に含めるべきではないと思います。

埋設管路への地下水の浸入(管接手部、取付管接続部、クラック)による土砂流出による地下空洞の形成は、WRc始め海外の研究機関の資料でもみましたが、地震動により形成が促進されることは初めて知りました。浸入水の経路を補修し、浸入水を止めることでアーチ構造が保たれ地下空洞の形成の進行は留められるという知見があったと思いますが、いったん形成された地下空洞は、大きさによるとは思いますが、地震動による刺激で陥没を起こし得るのでしょうか?

模型実験の観察によると、水の作用の土砂流出による空洞の成長と振動による空洞の成長はメカニズムが異なります。空洞が振動によって崩壊することにより、あたかも空洞が表層部に上ってきたようになり、表層部を得意とする地中レーダで捕捉されるようになるということだと思います

陥没危険度への地震動への影響についてのお話がございましたが、地震加速度と空洞の上昇・拡大率やその空洞の特徴、地震加速度と空洞発生率やその空洞の特徴の関係性については、どこまで解明されているものなのでしょうか。また最新の研究文献などがあれば教えていただけたらと考えています(桑野先生の2021生産研究の論文を拝見したところですが、さらに勉強できたらと考えております)。

地震と空洞の関係については、震度5以上の揺れが発生した場所では空洞の発生率が高いというデータがありますが、それ以外にはあまり定量的な検討はされていません。今後の検討課題の一つと考えています。

民家に隣接する公共下水管内の老朽化したコンクリートの浮き、剥がれ、草木の根っこがみられています。民家への地盤沈下は考えられますでしょうか。下水管が原因で個人宅が沈下した場合、調査はどちらでされることになりますでしょうか。マイクロ派が主流になれば無人放置敷地でのリスク把握も可能でしょうか。

土砂流出の量と周辺地盤の変状には相関がありますので、全て程度の問題だと思います。一般的には、管への土砂流出の影響は隣接地よりも直上に出ます。

陥没危険度の指標ですが、幅と深さだけでなく、厚みや地下水位等も陥没のしやすさや陥没の際の危険度があると思います。どの程度までそういった指標を含め、検討できているのかご教授願います。

実務で用いられている路面下空洞探査(車載型地中レーダ)で取得可能なパラメータを用いて陥没予測をする事がまずは優先と思いますので深さと幅に着目しています。厚みは陥没した場合の危険性に、地下水位は空洞の成長性に、それぞれ関係すると考えています。模型実験を使った検討はしていますが、実際の路面下空洞データの分析までには至っていません(地下水位の影響はポテンシャルマップには取り込んでいます)。

路面陥没の可能性評価以外にゆるみ厚や成長速度、発生原因、被害の甚大性について、空洞の危険性を評価した研究例や事例等があれば教えていただきたい。

実際の路面下空洞データについて、ご指摘の点を評価した事例はほとんどありません。強いて言えばポテンシャルマップがそれにあたるかもしれません。藤沢市における空洞モニタリングや開削調査によりゆるみ厚、成長速度、発生原因等を報告した事例は、国総研受託研究報告書に記載している他、現在論文準備中です。

一次調査で空洞最浅部が20cm度深めになるようなことをおっしゃっていたと思いますが、確か最浅部の多くが0.2~0.6(0.8だったかもしれません)mであるなかで、20cmのズレはとても大きく感じました。また、一次調査のみの場合は陥没危険度評価に影響があるかと思いますが、それくらいの頻度で深めになってしまうのでしょうか?

ご指摘の通りですが、20cmは必ずしもレーダ探査の測定誤差とは限らず、1次調査と2次調査との時間的ズレによる差異や、削孔時の空洞天井部の崩落等も含まれると思われます。地中レーダ探査の深度測定精度を上げる努力よりも、20cm程度浅い可能性があるということを含んで危険度評価するのが合理的と考えています。

空洞の発生を防ぐ、若しくは空洞化しても路面への影響を最小化するような、設計、施工、補修方法

空洞生成予防という観点では、容易に流出しにくいような裏込材をあらかじめ管路周辺に用いることが考えられます。また、ジオテキスタイル等で空洞が路盤に侵食しないようにすることも可能性の一つとして考えられます。

地中レーダ探査の適切な時期(夏前後、梅雨前後など)、タイミング(震度〇以上など)について、これまでの研究から得られた知見などあればご教授いただきたいです。

空洞生成および成長は、雨と地震の後に促進することがわかっていますので、もしタイミングを見計らうことができるのであれば、多雨の時期の後、および地震後がよいと思います。

埋設菅等がある箇所について、吸い出し等で空洞が発生すること多いですが、具体の対策工法事例があれば教えていただきたいです。

現状では、空洞が見つかってから、開削埋戻し、充填または(陥没危険度が低い場合は)モニタリングで対策しています。今後は予防策を打つことも考えられると思います。

空洞の成長速度について、今後の研究予定はありますか。

道路管理者や下水道管理者の方々にご協力いただき、空洞のモニタリングをすることができれば知見が進むと思います。

住まいに隣接する公共の下水道管の老朽化の把握、交換がどれほど進んでいるか(見えない箇所もあるため)、国、自治体の取り組みに、どれほどの地域差、温度差があるか知りたい。

下水道の老朽化度合や更新の状況については、下水道管理者が可能な範囲で公表していると思います。

空洞発生の断面の実施模型ですが、中身を川砂から山砂や粘土質に変えても同じようになるのでしょうか。

地盤材料によって、土砂流出の速さや空洞・ゆるみの様相は異なります。桑野他(2010)、老朽下水管損傷部からの土砂流出に伴う地盤内空洞・ゆるみ形成過程に関する検討、地盤工学ジャーナル、2010 年 5 巻 2 号 p. 349-361(https://doi.org/10.3208/jgs.5.349)に、様々な材料の空洞形成を比較しています。

静岡市 建設局 道路部 道路保全課 鏡味志津枝

データベースへの諸元データー入力には膨大な手間と費用がかかるのではないのでしょうか?コストパフォーマンスが高い推察いたしますが、費用対効果をご教示ください

調査とりまとめの一貫で委託の成果品として諸元データを所定のExcelに入力してもらっており、そのデータはシステムで一括取込できる仕様となっています。データベースは、空洞調査だけでなく橋梁など18施設と一体となって運用しており、データベースが導入されていれば毎年の調査の諸元データ入力の費用対効果は高いと考えております。

神奈川県 県土整備局 道路部 道路管理課 堀江勇真

神奈川県さんへ確認ですが、調査対象路線は絞り込みをしているのでしょうか?また、路面下空洞調査の予算規模をおおよそでよいので教えていただくことは可能でしょうか

調査路線は、県が管理する国道・県道の約1,000kmを対象としており、約200km/年の周期で実施しています。予算規模については、車線数等にもよりますが、おおむね年間で約50,000,000円程度の予算を計上しています。

府中市 都市整備部 インフラマネジメント担当副参事 楠本俊二郎

府中市の事例において、分解能20m×5m(Sentinel・Cバンド)は、陥没箇所特定にはもう少し精度がほしいと推察するが、これについて、ご見解や今後の見通しをお聞かせいただきたい。

今回の調査は、本市の道路等包括管理事業をステップアップするため先導的官民連携支援事業において、先進技術の試行的活用のひとつとして実施しました。なかでも衛星SARは、俯瞰的に地形の変異をつかむことに優れていると認識しています。 本件検証は、地形的特徴をつかみ陥没箇所と比較することで、陥没箇所(空洞箇所)周辺においても地盤変動が見られるか、もしくは地盤変動が見られる箇所に陥没(空洞)があったかの相関を確認し市管理道路の空洞化傾向を把握し、今後の空洞調査のスクリーニングの確立につなげることを目的としています。ご質問のように陥没箇所をピンポイントで把握しようとしたならば、今回使用したCバンドでも、あるいはそれより高解像度の波長を使用しても不足であろうことは承知しています。 いづれにいたしましても衛星SARと地表面の実地調査(レーダーに限らず画像解析やレーザー解析なども含めて)を効率的に組み合わせることで、インフラ管理の効率化につながるものと考えています。

SARの変位観測を組み合わせた維持管理大変興味深く聴講させて頂きました。空洞補修済箇所の4年間の変位量-10mm以下が7割以上とのことでしたが、地勢的な変位量(武蔵野台地の隆起、太平洋側の沈下)を差し引いた値(周辺と比較して凹んでいる)と考えれば良いでしょうか? 補修後の再陥没を検知する意図なのか、空洞検知していない場所でも陥没の兆候を捉える意図なのか、データの活用方向性を教えて頂けますでしょうか。

今回の調査は、本市の道路等包括管理事業をステップアップするため先導的官民連携支援事業において、先進技術の試行的活用のひとつとして実施しました。なかでも衛星SARは、俯瞰的に地形の変異をつかむことに優れていると認識しています。 本件検証は、地形的特徴をつかみ陥没箇所と比較することで、陥没箇所(空洞箇所)周辺においても地盤変動が見られるか、もしくは地盤変動が見られる箇所に陥没(空洞)があったかの相関を確認し市管理道路の空洞化傾向を把握し、今後の空洞調査のスクリーニングの確立につなげることを目的としています。 配色の関係で武蔵野台地が隆起して見えると思いますが、干渉解析結果から、隆起はなく全体的には多摩川に近いところほど沈下し、ところどころ古くから沢や窪地があったところも沈下が著しいと捉えています。これは地下水の影響があるものと推察していますが、今後の調査・分析が楽しみであると考えています。 来年度(R4年度)に路面下空洞調査を行い、SAR画像と合わせ分析することで更に詳細なことがわかってくるものと考えています。 本年3月16日(水)深夜の地震などによる影響も来年度の調査に影響するかもしれませんので、地震による空洞生成といったあたりも含め、調査を組み立てたいと考えています。

東京大学生産技術研究所 竹内渉

SARのデータ処理ですが、衛星画像・航空写真等でやるパンシャープン処理のような感じで分解能を疑似的に上げることは出来るのでしょうか。

SAR画像と可視画像とはそもそも撮像原理が異なり,撮像する帯域幅・周波数を変えない限り,基本的には撮像後の画像処理で空間分解能を上げることは,現段階では難しいと思われます.

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